最終選考会では、2名の最終選考委員が、第1次選考を通過した13作品を1作品ずつ検討した結果、中学生の部で最優秀賞1作品と優秀賞1作品、高校生の部で最優秀賞1作品と優秀賞1作品と特別賞1作品が選ばれました。

 

第1次選考を通過した作品への、最終選考委員からの感想やアドバイスをご紹介します。ぜひ、これから文章を書くうえでの参考にしてください。

  

 

 

【中学生の部】

 

佐々木 大輔さん(中1)

『縞模様のパジャマの少年』

(ジョン・ボイン 作/千葉茂樹訳/岩波書店)

 

金原この作文、原稿用紙で6、7枚の分量があると思うけど、本をテーマにこれだけ書くのは中学生にとってかなり大変ですよね。まず、よく書いたなと思いました。ストーリーの紹介もしっかりできているね。それだけに、自分の考えや感想を書いているところが少ないのがちょっと残念。どういう怒りを感じたのか、どういう衝撃を受けたのか、そこをもっと読みたかった。最後、ウクライナに話を持ってくるのは流れとしてよくわかる。ただ、この物語とどうつながるのかを、もう一度踏みこんで考えてみてほしい

 

田中物語のあらすじを時系列に述べていき、心に残った場面にはひと言感想も添える、という形で作文を進めています。あらすじと感想が混在すると、どこまでが物語なのかわかりにくくなることが少なくありませんが、この方の作文では、一緒に本を読み進めているような臨場感を生みだしていて、うまくいっていると思います。本から受けた衝撃をなんとか言葉にしようとしている努力も伝わってきました。印象に残った場面は、またいつか読み直してみてください。きっと発見があります。最後の「今日の世界」についての考察は、とても力強い意見で、頼もしかったです

 

 

本山 みいさん(中1)

『アルジャーノンに花束を』

(ダニエル・キイス作/小尾芙佐訳/早川書房)

 

金原あらすじと感想を書いてくれましたね。この本は長くて、最初はひらがなが多い書き方になっていて、読みづらかったと思うけど、がんばって読み通したのはりっぱです。作文の内容はシンプルで、ナイーブなところがよく現れている。欲をいえば、もう少し掘り下げてくれるとうれしいかな。あと、言葉が先走りしているというか、「感情の成長」などの言葉にふりまわされているのがちょっと気になりました。自分の経験を書いてくれたところはわかりやすくて、とても印象に残ったので、そこと物語を比較しながら書いてくれると、さらにいい作文になったと思います

 

田中本を読んで衝撃を受けて、その気持ちを作文に書いてくれました。物語は、主人公チャーリイが書いた『経過報告』という形でつづられているので、それを読みこなしてあらすじを作るのは難しかったと思います。ですが、この方は、きちんとまとめられていました。すばらしいですね。なので、言葉が少し足りなくて、チャーリイにもともと人間らしさがなかったように読めてしまうところがあったのが、とても惜しいです。とはいえ、素直に気持ちを文章にしている、すてきな作文でした

 

 

太田 哲之介さん(中2)

『おさるとぼうしうり』

(エズフィール・スロボドキーナ作/松岡享子訳/福音館書店)

 

金原ひとつの色をいろんなものに使っているのに気づいたのはえらい。たしかに空と湖とぼうし、そしてチューリップと民家の屋根とぼうしに同じ色を使ってます。そこらへんの発見は、気づかない人もいると思うので、評価したいです。ただ、例が2つしかないので、もう少し詳しく読みたい。同じ色にすることにどういう効果があるのか、そこが大切なので、ただすばらしいとまとめるのはもったいない気がしました。絵が好きで、よく美術館に行くようなので、そういうところももっと書いてほしかったです

 

田中絵本との出会い、あらすじ、感想、まとめ、とテンポよく話が進み、エッセイのように読めました。絵がお好きなだけあって、色について言及されている箇所には、熱がこめられていますね。発見と感動と考察が書かれていて、とても興味深かったです。「鮮やか」という言葉を印象的に使われているので、「色の素晴らしさ」が「鮮やかさ」にどうつながっているのか、さらなる考察を読みたくなりました。この方なら書けそうですし、そこを掘り下げると、作文の魅力がさらに増すと思います 

 

 

かほさん(中2)

『星の王子さま』

(サン=テグジュペリ作/河野万里子訳/新潮社)

 

金原これだけ長い二次創作をよくがんばって書いてくれたなと感心しました。力量はあるし、熱意も感じられる。『星の王子さま』をしっかり読んだうえで、全体の流れを作品にそのまま取り入れるところまではできているので、つぎは、自分らしさをもっと出せたら、もう一段上の作品になりそうです。あと、最後のほうに出てくる別の王子が、星の王子さまの話を聞いて、ああそうかと納得して帰って終わるのはもったいない。ぼくが教えている創作ゼミでもよくあるんだけど、本人が何もせずに解決する話はいまいちかな。本人が何か体験して何か見つける、あるいは本人が行動を起こす物語だと動きが出てくる。期待しています

 

田中『星の王子さま』のその後を描いた二次創作。王子さま、バラ、ひつじ、二番目の星にいた男に似たキャラクターを使って、元の物語と地続きの話をしっかりつくりあげています。しかも、ロマンティック。本のあとがきにあった作者サン=テグジュペリと妻コンスエロのエピソードを読んだあとだと、この作品の王子とバラのやりとりが、余計にじんときますね。服の説明で「星を映し出したかのように輝いていた」など、光る表現もありました。地の文の「僕」と、王子さまが心の中で語りかける「きみ」が呼応しているのも、かっこいい。ただ、そこは、わかる人にしかわからないかもしれないので、ひと言説明したほうがよさそうです。いずれにしても、物語を書くのが大好きなことが伝わってくる作文でした

 

 

池谷 友里さん(中3)

『天官賜福』

(墨香銅臭作/鄭穎馨訳/フロンティアワークス)

 

金原アニメをきっかけに、原作の小説を読んだんだね。架空の古代中国が舞台。この本、知らなかったので、こんなおもしろいものがあるのかと思いました。作文には、『天官賜福』は魅力的だということを、力強く書いてくれています。ただ、登場人物のおもしろさとか、それぞれの意外性とかが次々に書かれているんだけど、このままだと、じゃあ、何が一番おもしろいんだと逆に聞きたくなってしまう。この物語はここがおもしろいんだぞというところを強く出してくれると、さらにいい作文になると思います

 

田中アニメで知って小説を読んだとのこと。興味から二段組みの長い小説を読まれたことが、まずすばらしい。そして、物語のどこが気に入ったのかを、自分の言葉で語っているのが、とても魅力的です。文のはしばしに、執筆者のキャラクターが出ていて、そこも作文の魅力になっていました。欲をいえば、せっかくアニメと小説の両方を知っているので、違う点などについて書くと、さらにおもしろい作文になったように思います。とはいえ、楽しい作文でした!

 

 

菊池 彩葉さん(中3)

『ローマ帽子の秘密』

(エラリー・クイーン作/越前敏弥・青木創訳/KADOKAWA)

 

金原日本の作品とは違った異国情緒溢れる外国文学独特の世界観を感じたとか、人物が身にまとっている夜会服などに触れてその世界観に浸りやすくなっている、などと書かれているのは、翻訳家としてはうれしいことですね。外国人の名前がだれのことかよくわからなくなるという指摘もあって、正直だなと思いました。途中から自分の意見と友だちの意見を交互に入れているのもおもしろい。ただ、そうすることで、いちばんいいたいことが、ややぼやけてしまうのが惜しかった。全体としてはよくまとまっていて、また、ぼくにとっては昔読んだ本を思い出してなつかしい気持ちになれる作文でした

 

田中本の感想として「作者と読者がフェアな状態で知恵くらべをすることができた」と書かれていましたが、この方の作文の書き方も、物語のいいところだけでなく悪いところも書くというフェアなスタイルでした。このミステリが「可能性を一つ一つ潰していく」スタイルだというのは、たしかにそのとおりですね。ミステリ好きで、他にもいろいろと読んでいるからこそのコメントが光っていました。考えていることを、読む人に伝わるように文章にできている点も感心しました

 

 

鈴木 琢杜さん(中3)

『セミ』

(ショーン・タン作/岸本佐知子訳/河出書房新社)

 

金原「可哀そうなセミに同情していい気分になっているだけじゃないの?」などの指摘がおもしろいと思いました。「置いていかれたのは僕たちニンゲンのほうだった」というのはまさにそうだし、「無意識にセミを下に見ていたからではないか」など、自分の気持ちをうまく言葉にしています。この作品はいろいろな読み方ができるのだけれど、ショーン・タンがセミの物語にこめた意図をしっかり読みとったうえで、自分なりに受けとめて、少し展開させているところがいいですね。「僕はただ「読者として正しい反応」を無意識に追っていただけだった」という最後のふりかえりの言葉もよく、とても印象に残る作文でした

 

田中サラリーマンのセミを描いた絵本を読んで、あらすじをコンパクトにまとめた上で、感想と考察を展開しています。セミに同情することは、おそらく多くの人が示す反応だと思うのですが、この方はそこで終わりません。自分の思考をどんどん深めていって、静かで厳しい問いかけをつづけます。そこが作文に緊張感をもたせ、同時にリズムも生み出していて、すばらしかったです。「僕たちが他人を憐れむとき、その人の顔がみえているのだろうか」など、はっとする表現もたくさんありました。全体的にむだを省いたことで、いいたいことが鮮明になっています。きりっとした読み応えのある作文でした

 

 

【高校生の部】

 

安保 宏海さん(高1)

『どうながのプレッツェル』

(マーグレット・レイ作/わたなべしげお訳/福音館書店)

 

金原小さい頃に読んだなつかしい絵本を読み返して、感想を書いてくれたんだね。ナイーブな視点が新鮮で、よくまとまっている作文だと思いました。これだけ人に伝わる文章を書けているのだから、もう少しつっこんだ内容を読みたかったかな。そういうものを書けそうです。自分なりの視点を見せてくれたら、さらにいい作品になると思います

 

田中導入の、自分の犬の話と絵本との出会いのエピソードがとても魅力的で、一気にひきこまれました。あらすじもうまく書けていますし、文章にリズムがあって心地いいです。前半がとてもよく書けていたこともあって、後半の考察がやや物足りない印象を受けました。前半の印象から、期待して、もう一歩踏みこんだ何かを求めて読んでしまうからでしょうね。惜しかったです。これからもその文章の持ち味を大切に

 

 

上村 太一さん(高1)

『三体X 観想之宙』

(宝樹作/大森望、光吉さくら、ワンチャイ訳/早川書房)

 

金原翻訳ものの読みづらさについてのコメントや、名前が漢字で表記されていて読み方がわからないという感想など、余談のところが翻訳家としておもしろく感じました。エヴァっぽい感じがするという視点もおもしろかったです。いまの高校生でもエヴァを見ている人はいるんだね。SF好きだからかな。せっかくエヴァっぽさに触れるなら、もう少し本質的なところ、似てるところ、テーマが重なるところなどを書くと、さらに興味深い内容になりそうです。とはいえ、シンプルでよくまとまっている作文でした

 

田中『三体X』は「三体」三部作(第二部と第三部は上下巻に分かれている)の公式スピンオフ。ということは、三部作の5冊を読んだあと、『三体X』を読んだわけで、まずはこの大作を読まれたことに感心しました。また、作文を書くとしたら、「三体」三部作のほうにふれないわけにもいかないでしょうから、説明の仕方が難しかったと思います。この方は、いい意味でうまくあらすじを回避して、登場人物の漢字の読み方について言及したり、「エヴァ」を引用したり、スピンオフで本編にはなかった補完部分の例をひとつ挙げてみたり、とご自分に思い切り引きつけて、この本を語ってくれました。「三体」も読みたくなるような楽しいブックレビューになっています。最後のしめの言葉も効いていました

 

 

岡澤 俊貴さん(高1)

『ニール・サイモン戯曲集Ⅳ』

(ニール・サイモン作/鳴海四郎、酒井洋子訳/早川書房)

 

金原ニール・サイモンの芝居はいくつか観ているけれど、この三部作は観ていないなあ。この本はニール・サイモンの三つの戯曲が収録されていて、三つとも、作者ニール・サイモンの分身ともいえるユジーンが主人公。この作文は、主人公と自分を比較しながら書くスタイルがつらぬかれていて、長い三部作の内容もうまくまとまっています。「ユジーンの『客観』はここにきて『傍観』と見られてしまう」という発想や表現の仕方がうまい。たぶん本人がそれを実感しているんだなと思うし、それがよく伝わるように書けているところも高く評価したいです

 

田中戯曲集なので、物語はセリフとト書きで進んでいくわけですが、それを読みこなして、物語を楽しんでいるのが、すばらしいと思いました。さらに、物語を咀嚼して、主題を主人公のユジーンと自分にしぼった作文にしています。いいたいことがはっきり伝わってくる書き方で見事でした。しかも、ユジーンと自分を中心に書きつつ、長い三部作の物語を端的にまとめて追っていく形にもしているんですよね。うまいなあと感心しました。いつか、このお芝居を観る機会があるといいですね。なぜ戯曲を読んだのか、どうやってこの三部作を見つけたのか、気になりました。機会があったら教えてください

 

 

小森 悠太さん(高1)

『ビロードのうさぎ』

(マージェリィ・W・ビアンコ作/酒井駒子訳/ブロンズ新社)

 

金原昔読んだ絵本を思い出して書いた作文。「本物」ということにこだわって、自分なりの感想をうまくまとめていて、そこは評価したいです。作文では、絵本の中で一番印象に残った場面が書かれていて、「この瞬間私はうさぎが本物になったんだなと思った」という感想が、この作文のキモになっていると思う。キモの部分をもっと掘り下げて、どうしてそう感じたのか、というところを詳しく書いてくれると、さらにおもしろい作文になりそうです

 

田中小さい頃に読んだ絵本を、何年か後にふたたび楽しむことは、いくらか年を重ねた人が味わえる読書の醍醐味のひとつだと思います。以前とは違う感想をもったり、新しい発見があったり。そうした魅力を作文に書いてくれました。同じ読書を楽しむ者として、心から同意します! 細かいことをいいますと、あらすじは、今回の作文全体の分量を考えたら、もっとぎゅっとまとめてもいいように感じました。せっかくなので、またいつか、この絵本をじっくり再読してほしいです。本物になる瞬間とは。本物とは。きっと発見があると思います

 

 

西村 皓輝さん(高2)

『ムーンウォーク マイケル・ジャクソン自伝』

(マイケル・ジャクソン作/田中康夫訳/河出書房新社)

 

金原とてもおもしろく読みました。原稿用紙12枚を楽しみながら書いている、その気持ちがよく伝わってきました。読んでいてとても気持ちのいい文章です。しいていえば、本の紹介が全体のほとんどを占めているので、マイケル・ジャクソンを好きだという自分の意見をもっと読みたかったかな。作中に意見がなかったわけではないのだけれど、もっとあったほうがいい。「この本を読み終わってまず思った事は、どれだけ努力して報われても、幸せになれるとは限らないという事だ」というのは、なるほどな、と。楽しい作文でした

 

田中マイケルが大好きになって、歌や映像を探して、情報をあれこれ入手して、自伝を手にとった、とのこと。この本を夢中になって読み、ご自身が愛してやまないマイケルの数々の音楽の背景を発見していく興奮が伝わってきました。本の内容をしっかりまとめつつ、自分の知っている曲の内容など盛り込むことで、作文がひとつの物語になっていました。欲をいえば、最後の感想部分で、もう一歩ふみこんだ意見がほしかったです。マイケルの歌を何度も聞いている方だからこそ、また、本をまとめる力がこれだけあればこそ、さらに書けることがありそうです。読んだとき、書いているときの熱量がまっすぐに伝わってくる、とても魅力的な作文でした

 

松原 碧さん(高2)

『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』

(ジュリアン・ジェインズ作/柴田裕之訳/紀伊國屋書店)

 

金原「古代人は神の声を聞いていたのではないか」という〝二分心〟の仮説についての本。著者は丁寧に考えを提示、検証、説明している。この専門書のような大著を、自分なりにうまく消化していて、感心しました。ところどころで異議を唱えている点は、頑張っていて、好感が持てます。ぼくは大学生のレポートをよく読むけれど、大学生でもここまで書くのは難しいと思う。多少の考え違いがあるとしても、高校生らしい格闘のあとがちゃんと見えて、魅力になっている気がする。読んでいておもしろい作文。高く評価します

 

田中興味のおもむくままに、この難しい本に果敢に挑戦し、自分なりに考え、疑問を投げかけたり反証したりをつづけた、その探究心と根気に脱帽しました。すばらしいのひと言につきます! 文章も、読み手に伝わる書き方を心得ていますね。かなりの長文を書いてきてくれましたが、最後まで引き込まれて読みました。一点だけ。意識、経験、学習、思考といったよく知っている言葉でも、この本ではどのように使われているか、ときどき立ち止まって考えてみないと、自分の常識とまざって混乱するかもしれません。そこだけ意識する(シャレになってしまいました!)といいように感じました。と、ごちゃごちゃいいましたが、全体からしたら、些細なことです。「最後に」に書かれていた「すべてのものは周りのあらゆるものと関わりをもって存在していることを実感した」という言葉に、この本を読んだ者として共感しました。読み応えのある大作をありがとうございました!

 

 

総評

 

「読書探偵作文コンクール」の選考は毎年楽しみにしています。取り上げる本は翻訳物ならなんでもいいし、読書感想文のコンクールと違って、何を書いてもいいというところがうれしい。それこそ感想文でも、二次創作でも、マンガでも、なんでもあり。そしてなにより、中学生、高校生の考えていること、感じていることが伝わってきます。

 大学で30年以上教えているのですが、若い人たちの思考力、文章力は素晴しいと思います。「最近の若者は本を読まない」とか「最近の若者はろくな文章が書けない」とかいう大人がいますが、それは大人がろくに若者の文章を読んでいないだけのことです。そんな大人の意見は無視して、好きなように書いてみてください。それまで気がつかなかった自分に気がつくかもしれません。(金原瑞人

 

 今年度も新型コロナウィルスの影響がつづくなかでのコンクールでしたが、それでも翻訳書を読み、作文を書いて応募してくださったみなさん、ありがとうございました。関係者一同、おおいに胸をおどらせながら、すべての作品を審査しました。1次選考に残らなくても、がっかりしないでくださいね。みなさんの挑戦は、しっかり受け止めています。さて、受賞作に関してですが、読んだ本はクラシカルな名作、絵本、戯曲、自伝とバラエティ豊かなラインナップになりました。また、今回は惜しくも受賞はかないませんでしたが、内容のすばらしかった作文に特別賞を授与しました。五つの作文に共通しているのは、読書をとても楽しんで、その熱をうまく文章にそそいでいるということ。おもしろく読んだ本の魅力を、自分なりの表現で、作文を読む人に伝わるように書いてくれていました。最優秀賞と優秀賞の作文はサイトに掲載されますので、ぜひご覧になってください。このコンクールがきっかけで、はじめて「翻訳書」というものを意識して読んだ方もいらっしゃると思います。広い世界からやってきた翻訳書には、好奇心いっぱいの若いみなさんのお眼鏡にかなう、おもしろいものがたくさんあります。ちょっと読んで、ムリと思ったら、次にいけばいいんです。どんどん読んで、好きな本、気になる本を見つけてください。もしかしたら、そうして手にとった本は、大人になったとき、いつのまにか糧になっているかもしれません。運がよければ、宝物に出会っていたことに気づくでしょう。(田中亜希子